読書メモ:父の詫び状(向田邦子)

昭和56年(1981年)に飛行機事故で亡くなった、

向田邦子さんのエッセイです。

新装版 父の詫び状 (文春文庫) | 向田 邦子 |本 | 通販 | Amazon

今年は、没後40年ということで、

TVでも向田邦子さんの番組がいくつか放送されたみたいです。

 

「2007年5月15日 第4刷」と書いてあるので、

10年以上前に読んだことになります。

 

実家の本棚に「父の詫び状」の次のエッセイ「眠る盃」が置いてあり、

パラパラ読んでみると、すごく面白くて、

この「父の詫び状」を買ったことを思い出します。

 

「父の詫び状」もなんとも言えない面白さです。

思わずフフ、と笑ってしまうような。。

ククク、とちょっと声が出るほどの場合もあります。

 

向田邦子さんは、1929年(昭和4年)生まれなので、

私とは何世代も離れていますが、

自分の子供時代にも重なるような、懐かしい気持ちになります。

 

情景の描写が小説のように細かくて、

本当に目に浮かんでくるようです。

 

『父の仕事の関係で、小学校だけでも四回転校しているので、

名前も忘れてしまったのだが、お弁当のおかずが三百六十五日、

卵という女の子がいた。』

『あだ名をタマゴと呼ばれていた。』

『タマゴは、日本舞踊を習っていた。子供のくせに身のこなしに

特有の「しな」があり、

セーラー服がまるで和服を着ているように見えた。』

『教壇で採点をしている男の先生にブラ下がるようにして甘え、

手首から先だけを撓(しな)わせて、

「ちょいと・・・・」

という感じで先生の肩を撫(ぶ)った。』

 

ちょっとだけ引用しようかと思ったのですが、

面白さが伝わるようにと、長々と引用してしまいました。

 

向田邦子さんが、すぐ近くにいて、

語りかけてくれているような、

不思議な気分になるエッセイです。

 

この本に出てくる思い出の家族は、古き良き昭和の日本の家族です。

戦時中のことも、どこか愉快に描かれています。

 

実家に帰って、「眠る盃」も読んでみたくなりました。